絵画「パレットタウンの大観覧車と東京スカイツリーの夜景(「旅の眼」掲載)」 東京都江東区 絵と文:井上晴雄
「パレットタウン大観覧車と東京スカイツリーの夜景」
絵と文 井上晴雄
日本屈指の観光スポットとして知られる東京都お台場。近代的な建築物や商業施設が並び、修学旅行のコースとしても定着している。
お台場の起源は江戸時代に遡る。1853年、ペリー艦隊が日本に来航し幕府に開国を迫った。危機感を募らせた幕府は、品川沖に11基の台場を建造し対抗する計画を立てる。結局建造した砲台は一度もつかわれることはなかったが、一帯の埋め立て工事が以降進められ臨海副都心が形成されていくことになった。1941年東京港が開港、1976年に首都高速湾岸線東京港トンネルが開通し、1993年にはレインボーブリッジが芝浦と台場間を結んだ。近未来的な街並みが姿をあらわすとともに、お台場は美しい夜景を望めるデートスポットとしても人気を博すようになった。
空が澄んだある日の黄昏時、お台場の南端に立つテレコムセンタービル21階の「テレコムセンター展望台」に訪れた。「テレコムセンター展望台」は日本夜景遺産に登録されている、お台場随一の夜景名所である。広く切り取られた窓から北の方角を眺めると、湾岸に立つパレットタウンの大観覧車がまばゆい光を放ちながら回りはじめていた。ピンク色から青色にその色彩が変わったかと思うと、次は勢いよく回転して七色へと変化していく。それとともに、眼下のまちにはまるで星屑が降り積もっていくように無数の明かりが灯っていった。
いつしか銀河のようになった光の渦のなかを、新橋と豊洲間を結ぶ「新交通ゆりかもめ」の車両がゆっくりと駆け抜けていく。重なり合う有明のビル群の先には、ライトアップされた東京スカイツリーが淡く浮かびあがり、鏡のような東京湾の海面に映りだしていた。キラキラと一途にまたたく東京の明かり。そこには、さまざまな人の夢や願いが重なり合っているのかもしれない。夜が深まるとともに、ますます華やかさを増していくお台場の夜景はどこまでも美しく、心にしっとりした安らぎと未来への希望を感じさせてくれた。
(絵画「パレットタウンの大観覧車と東京スカイツリーの夜景)」 絵と文:井上晴雄/『旅の眼119号』掲載) ※当絵画は平成31年3月、テレコムセンタービルに寄贈しました