長門峡の秋
ある霧が晴れた日、JR長門峡駅で列車を途中下車した。山口市側の渓谷入口にあたる道の駅から、阿武川の河岸に沿ってのびる探勝道を辿る。
眼下には白く速く流れる悠々とした流れ。日本海に向かい、澄んだ瀬音を立てながら流れていく。川べりには石英斑岩が侵食されてできた奇岩怪石がまるで屏風のように連なっていた。
長門峡は山口市から萩市にかけてつづく四季折々の景色を楽しむことができる景勝地。山ひだにはケヤキ、クヌギ、モミジなどが黄色に赤色にと染め競っている。そして、その鮮やかな秋色が深い淵に映し出され、ゆらゆらと揺れていた。こもれ陽が飛沫をまぶしく照らすたび、その余韻が絃の音のようにやさしく伝わってくるように感じた。
(F10号水彩/絵と文:井上晴雄)
















