絵画「氷見の朝陽」 富山県氷見市 絵と文:井上晴雄
「氷見の朝陽」(富山県氷見市)
絵画と文:井上晴雄。
氷見は富山県西部に位置するちいさな港町。雨晴海岸を窓外に、列車が終点の氷見駅に着いたのは、まだ朝の早い時間だった。薄暗いプラットホームに降り立ったのは、ただ私だけ。寒々とした風がビュービューと頬を突き刺し、思
わず身震いした。
積もる雪を踏みしめながら、静まり返るまちを抜けていくと、鈍色の海が見えてきた。防波堤に打ち寄せた波が、冷たい飛沫を散らして、霧のようになってかかってくる。
そのときだった。鈍色の雲の切れ間から、朝陽が差し込んできた。まばゆいばかりの光の渦は、虹色の光線となり、ちいさな漁業のまちにやさしく降り注いだ。海に流れ込む川はそれを反射してキラキラ輝く。そして、厚く覆われた雪をゆっくりと溶かしていったのだった。
沖は明るく、海鳥がヒュルリヒュルリと鳴きながら旋回している。春がやってきた。
(F10号/国内旅行/富山県氷見市/旅行/2008年3月制作/井上晴雄 絵画と文 作品集/風景)
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