「氷見の朝陽」(絵画/朝陽のある風景)

Photo_2

「氷見の朝陽」

 絵画と文:井上晴雄。

氷見は富山県西部に位置するちいさな港町。雨晴海岸を窓外に、列車が終点の氷見駅に着いたのは、まだ朝の早い時間だった。薄暗いプラットホームに降り立ったのは、ただ私だけ。寒々とした風がビュービューと頬を突き刺し、思
わず身震いした。
 積もる雪を踏みしめながら、静まり返るまちを抜けていくと、鈍色の海が見えてきた。防波堤に打ち寄せた波が、冷たい飛沫を散らして、霧のようになってかかってくる。

 そのときだった。鈍色の雲の切れ間から、朝陽が差し込んできた。まばゆいばかりの光の渦は、虹色の光線となり、ちいさな漁業のまちにやさしく降り注いだ。海に流れ込む川はそれを反射してキラキラ輝く。そして、厚く覆われた雪をゆっくりと溶かしていったのだった。

 沖は明るく、海鳥がヒュルリヒュルリと鳴きながら旋回している。春がやってきた。

(F10号/絵画と文:井上晴雄。/2008年3月制作)

□北陸地方の旅行ガイドを見る

「函館の夜景」(絵画/夜景の風景)

Photo_5

           「函館の夜景」絵画と文:井上晴雄。  
  木々のシルエットの向こうに、市街地の灯りが、キラキラとまたたきはじめた。函館ならではの湾曲の地形があらわれたかと思うと、それは、ダイヤモンドを散りばめたような光の渦となって、壮大に目の前に広がっていった。思わず、息を呑んだ。

 時代が流れるとともに、まちも人も変わっていく。それは、寂しいことかもしれない。しかし、歴史が紡ぎだした、「まちの明かり」というものは、いつの時代も、何とあたたかく、美しいことか。そこには、人々が生きた証が刻まれているように思う。私も一生をかけて、まちを美しく彩る、ひとつのやさしい光になれればと思う。


※函館は、香港、ナポリと並ぶ「世界三大夜景」のひとつ

(B3絵画/風景 絵画と文:井上晴雄/2008年1月制作)





□北海道の旅行ガイドを見る 

「津軽の海」(絵画/海のある風景)

Photo_7

           「津軽の朝陽」絵画と文:井上晴雄。

 青函トンネルを抜けて、列車は、本州から北海道に入った。木古内駅で途中下車すると、
厳しい風雪が吹き荒れ、道は厚い氷に閉ざされていた。日本でも有数の豪雪地帯。あまりの寒さに身震いした。導かれるように、光の射す方向に歩いていくと、砂浜の向こうに、明るい津軽の海が広がっていた。打ち寄せる波がキラキラ輝き、沖はやさしい光に包まれていた。
  青森へ向かう一艘の船が、ゆっくりと光のなかに消えていった。その甲板に、津軽の
朝陽に手を合わす、老婆のシルエットが、一瞬、見えたような気がした。

 現代の社会において、私たちの一生は、順風満帆に進むのが理想と考えられがちである。しかし、私は、それが良いとは限らないように思う。むしろ、困難や試練に直面し、失敗や挫折を数多く知ってこそ、気づく幸せもあるような気がする。例えば、風雪のなかで見た、
この津軽の朝陽のように。

「津軽の海」(2008年1月制作/風景/絵画と文:井上晴雄。/F10号)

□北海道の旅行ガイドへ

明るい海が広がる

Aki

薄暗い山道を下っていくと 

木々の隙間から 

明るい海が広がった

沖にはまるで粉雪が舞い落ちるように
やさしい光が 

サラサラと降り注いでいた

(絵:井上晴雄./水彩画/F8号/2007年制作)

「安芸の海」絵画の説明

 鬱蒼と茂る山道を下っていくと、うねる木々の隙間から、夕照の安芸の海が広がった。沖には、一艘の小舟が、船尾を引きながら、ゆったり浮かんでいた。やさしい風と共に、仄かな光が、天から舞い降りてきた。

 光の先には、ちいさな島々と四国が横たわっている。かつて人々は、沖を眺めながら、一生のうちに、四国巡礼をしてみたいと、ロマンを抱いたという。生活は貧しかったけれど、心は豊かだった時代。
現代は、交通網の発達やスピード化により、何百キロ離れている土地へでも、容易に行き来できるようになった。確実に、社会は豊かになった。しかし一方で、大切な何かを失った気がする。
鳥の声、木々にそよぐ風、海の輝き、人のぬくもり・・そんな一見、何でもないことや、スローで不便であることに、案外、幸せのかけらがあったのかもしれない。


 

□中国・山陰地方の旅行ガイドはコチラから

                       
                   

Continue reading "明るい海が広がる"

「冬の川」

 fuyukawa「冬の川」 水彩F6号 絵と文:井上晴雄。


        
「冬の川」作品説明

厳しい寒さが大地を覆い尽くした日。私は、北海道長万部からほどなく
離れた、ちいさな湯のまちをひとり歩いていた。空はどこまでも鈍色に
凍りつき、まちは、見あげるほど深い雪に閉ざされていた。

まちのなかに、ちいさな川の流れがあった。厚い樹氷が河岸の木々を覆い、
それらは厳しい風雪に耐えた跡のようで、切なく思えた。

 河岸に降りたつと、凍っているかのように見えた川に、清らかな水が
軽やかに流れていた。そのさまは、まるで時を奏でるオルゴールの音色の
ように美しく優しかった。脇には、春の草の芽が顔を出しはじめていた。
冬の川は雪に埋もれながら、春の準備をしていたのだ。

 ときが経てば、必ず季節はめぐりゆく。川が流れるように、真実に過ごして
いれば、どんなに長い冬にも必ず春は訪れる。

  川は絶え間なく流れ、大地の氷を溶かしていく。
 大地は生きている。
 私たちも生きている。
 冬の川は、大きな幸せを呼んでくれる。

Continue reading "「冬の川」 "

・「小樽運河の冬」

otaru「小樽運河の冬」 水彩F4号 絵:井上晴雄


□北海道の旅行ガイドはコチラから

Continue reading "・「小樽運河の冬」"

「厳島神社冬化粧」

 「厳島神社冬化粧」水彩画/F8号 絵と文:井上晴雄.
Photo_1

   「厳島神社雪化粧」作品説明

しんしんと降りつづけた雪は、夜通し止まなかった。早朝、宮島に渡ると、社殿は雪で覆われ、凛として佇んでいた。背後の山々には霧が流れ、ただ静かなときが、流れていた。

広島県廿日市市に浮かぶ宮島は、日本三景に数えられており、古来より神として信仰の対象となってきた島である。宮島の入り江には、ユネスコの世界文化遺産に登録されている厳島神社が建つ。約1400年前、地元の豪族であった佐伯氏が、御笠浜に社殿を建てたのが起源で、平安時代末期に、平清盛が、現在の社殿を造営したと伝えられている。宗像三女神を祀る。

社殿を眺めているうちに、深遠な気持ちになった。造営に携わった人々は、とうの昔に墓に眠っている。しかし、建物を通して、彼らの意志が時代を超えて、ひしひしと伝わってきたのだ。一族の栄華を超越して、後世を豊かにしようという切なる思いが。

時というやさしい粉雪が、今も静かに降り積もっていた。

                                     

作 井上晴雄。

      

Continue reading "「厳島神社冬化粧」"

「雪景色を走る汽車」・・書籍「旅」掲載作品

「雪景色を走る汽車」 水彩画/絵と文:井上晴雄 小さなまちに、汽車が走りぬけた モノクロの時代。いつまでも語り継いでいきたい 美しい時代。 (☆言葉入りポストカード→)http://haruo-inoue.tea-nifty.com/photos/post/kisya.jpg Photo  

Continue reading "「雪景色を走る汽車」・・書籍「旅」掲載作品 "