絵画「ふるさと列車~島原鉄道~(絵画/鉄道の風景)」 長崎県南島原市 絵と文:井上晴雄
木造の古びた駅舎
旅立つ青年を乗せた列車は ついに
動きはじめた
線路の先を見ようとしたが
かすんで なにも見えなかった
秋の陽が プラットホームに
やさしく 降り注いでいた
(F10号/2007年10月制作/絵画/鉄道の風景)
「ふるさと列車~島原鉄道~」 (長崎県南島原市)
絵と文:井上晴雄
島原は、長崎県南東部に位置する古い城下町である。格子窓や白壁を構える武家屋敷跡の並びを抜け、風鈴の音色のこだまを聞いているうちに、身も心も、いつしか昭和年代にタイムスリップしてしまう。そんなまちを通り、有明海に沿って走るのが島原鉄道。現在も、昭和30~40年代に活躍したレトロな列車が、少し前まで運行していた。
青年が旅立つ日、プラットホームには、見送る年老いた母の姿があった。空には粉雪のように光が舞い、普段と何変わることなく、古びた木造駅舎をやさしく包み込んでいた。汽笛が鳴り、列車は、ゆっくりとホームを離れたのだった。
(絵画「ふるさと列車~島原鉄道~(絵画/鉄道の風景)」 /長崎県南島原市/作品 :絵と文:井上晴雄)