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漱石が描いた小説の世界を味わえる、伊予鉄道の「坊っちゃん列車」 (愛媛県松山市)絵と文 井上晴雄 

漱石が描いた小説の世界を味わえる、伊予鉄道の「坊っちゃん列車」 (愛媛県松山市)   絵と文 井上晴雄

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数年ぶりに松山に訪れた。松山は愛媛県中部に位置する歴史漂うまち。その一角には日本三古湯のひとつに数えられる道後温泉が湧く。道後温泉にはさまざまな文人墨客が訪れたとされるが、そのひとりに文豪・夏目漱石がいた。漱石は明治28年(1895年)に愛媛県尋常中学校の英語教師として松山に赴任し1年余滞在。その後、そのときの体験をもとに小説「坊っちゃん」を執筆した。

道後温泉の中心部には、そんな漱石が足繁く通ったとされる公衆浴場の道後温泉本館が立つ。振鷺閣と呼ばれる望楼を構える木造三層楼の建物である。花崗岩でできた浴槽にはすべすべした無色透明の湯があふれ、身体を芯から温めてくれる。

道後温泉本館から土産屋が軒を連ねる商店街を抜けていくと、伊予鉄道の道後温泉駅が見えてくる。道後温泉駅は明治時代の旧駅舎を再現した木造二階建てで、そのレトロな雰囲気がいい。時刻表を見ると「坊っちゃん列車」がもうすぐ入線してくるとのこと。急遽乗車してみることにした。

坊っちゃん列車は明治時代から昭和初期にかけて活躍した蒸気機関車をモデルに復元された列車。小説「坊っちゃん」には次のような記述がある。「乗り込んでみるとマッチ箱のような汽車だ。ごろごろと五分ばかり動いたと思ったら、もう降りなければならない」

しばらくすると、幅2mほどの客車を2両連結させた小さな機関車がホームに入線してきた。まさしく漱石の「マッチ箱のような汽車」という表現にぴったりの車両だ。乗客たちが乗り込むと、汽笛をあげて坊っちゃん列車は道後温泉駅を出発。

客車は床も座席も板張りだ。スピードが遅くてしかもガタガタ揺れる。しかしこれが何とも味わい深い。やがて坊っちゃん列車は市内の繁華街へ。商店が連なる大街道を過ぎると松山城の堀端を走る。松山城は勝山山頂に立派な天守閣を構える平山城だ。愛媛県庁や松山市役所を過ぎ南堀端から南へしばらく走ると終点の松山市駅に到着した。

 (伊予鉄道坊っちゃん列車と道後温泉駅 絵と文 井上晴雄/『旅の眼120号』掲載)

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