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絵画 「大井川鐵道、新金谷駅にて」(元南海電鉄ズームカーとの再会)静岡県島田市  絵と文:井上晴雄

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大井川鐵道、新金谷にて

元南海電鉄ズームカーとの再会) 静岡県島田市

                           絵画と文 井上晴雄

 もうかれこれ30年近く前のこと、まだ小さい子供だった私は、南海電鉄高野線の電車にひとり乗って、和歌山県の高野山まで旅をしたことがある。そのとき私を高野山方面に連れていってくれたのは、21001系ズームカーと呼ばれる急行列車だった。難波駅から橋本駅までの平坦区間を時速100km近い速度で走り、橋本駅から極楽橋駅に至る山岳地帯は低速に切り替え勾配を力強くのぼっていった。そして車窓には、靄のなかに深遠なる高野の山々が連なるのが見え心躍った記憶がある。そんなズームカーは、平成9年には南海電鉄から姿を消した。

 最近、そのときの鉄道車両と思いがけず再会する機会があった。場所は静岡県に路線を持つ大井川鐵道である。引退後、南海電鉄の21001系ズームカーの一部は同鐵道会社に譲渡されていたのだ。大井川鐵道の大井川本線は、静岡県島田市の金谷駅から、寸又峡の入り口にあたる榛原郡川根本町の千頭駅までの39.5kmを結ぶ路線だ。大井川本線といえばSL急行「かわね路号」が運行していることで有名だが、私鉄の看板車両が第二の人生を歩む路線としても知られている。ちなみに2013年現在、元南海電鉄のズームカー21001系のほかに元近畿日本鉄道の特急車両16000系と元京阪電鉄の特急車両3000系も同路線にて活躍中である。

 昭和のまま時が止まったような新金谷駅の構内。ホームにゆっくりと元南海電鉄のズームカーは入線してきた。うす緑の車体に濃い緑のライン。往時と全く同じ姿である。しばらくするとワンマン運転のその普通列車はホームを後にした。軽やかなジョイント音を立てながら茶畑のなかを縫い、南アルプスへつづく蒼い山々を車窓に映しだしていく。五和駅を過ぎると悠々と流れる大井川が迫ってきた。鉄橋を力強く渡りトンネルをくぐっていく。曲がりくねるレールの先には、30年前と同じような明るくやわらかい光が差し込んでいた。

(絵と文:井上晴雄/絵画 「大井川鐵道、新金谷駅にて」(元南海電鉄ズームカーとの再会)静岡県島田市/「旅の眼」掲載) 

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