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小湊鉄道「上総中野駅」 鉛筆画

「私にとってのローカル線の旅~小湊鉄道に乗って~」
                   絵と文 井上晴雄

ローカル線に揺られ旅に出ると、何気ない風景に心の安らぎを覚えることがある。私はそんなひとときが好きだ。ローカル線のなかでもう一度乗りたいと思う路線のひとつに、千葉県の房総半島を走る小湊鉄道がある。
夏が終わり、房総の山々は秋支度をはじめていた。小湊鉄道は、千葉県の五井と上総中野間39.1kmを結ぶローカル線である。五井駅のホームにおりると、昭和30年代に製造されたというディーゼルカーが軽やかなエンジン音を立てていた。汽笛が鳴り、古びた列車は、ゴトゴトとレールを軋ませ市原の市街地を南下しはじめる。列車は全て各駅停車。海士有木駅、馬立駅・・小さな木造の無人駅が遠ざかっていく。市街地を過ぎると、車窓にはのどかな田園風景が広がりはじめる。陽光に染まる田には稲穂が黄金色になびき、畔道には、大きな籠を背負ったおばあさんたちが、和やかに昔話をしている。そんな古きよき時代によくあったであろう風景に心躍った。
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現代の日本は科学技術が発達し、高速化された時代になった。人々は効率よく生きることを求め、便利さや快適さを手にした。しかし、どこか無機質で生きにくい時代になったのではないか。一方、地方のローカル線はスピードが遅くなかなか列車も来ない。一見すると効率が悪く不便なものだ。しかし、その沿線を訪ねると、心に明かりがともる瞬間がある。心を澄ませ、目の前に展開する四季折々の自然の姿や人のやさしさにふれたとき、生きる感謝や喜びが湧いてくる。そのなかに真の「豊かさ」が秘められているような気がしてならないのだ。
小湊鉄道の列車は一時間ほど走り、養老渓谷の深い緑のなかに入る。長いトンネルを抜け終点の上総中野駅に着くと、やわらかい木漏れ日が駅舎を包み、さびれた線路の手前には、カンナの花々が、赤や黄色に咲き乱れ、旅人を出迎えてくれた。

 

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