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「津軽海峡の朝陽」

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           「津軽海峡の朝陽」絵画と文:井上晴雄。

 

 

 青函トンネルを抜けた列車は、北海道に入った。雪を被ったなだらかな山々と小さな田畑の先に、海が見え隠れしはじめる。JR木古内駅付近にさしかかったとき、鈍色の空からほのかな光が、差し込んでいるのが見えた。どことなく懐かしい思い出がよみがえり、途中下車した。

  改札口を出ると、厳しい風雪が吹き荒れ、まちは厚い氷に閉ざされていた。あまりの寒さに身震いした。このまま駅に戻ろうかと思ったものの、空の光をたよりに、雪を踏みしめながら、浜辺のほうに歩いていった。

 烈風に逆らって砂浜に出ると、その向こうに、明るい海が広がっていた。静かに打ち寄せる波がキラキラ輝き、沖はやさしい光に包まれていた。一艘の船が、ゆったりと弧を描いて進んでいる。気がつくと、寒さを忘れて、その穏やかで美しい光景に見入っていた。それは、凍てつく北海道の冬だからこそ、より一層、あたたかく掛けがえのないものに感じたような気がする。


 現代の社会では、私たちの一生は、順風満帆に進むのがよしと考えられがちである。しかし、私は、それが必ずしも良いとは限らないように思う。むしろ、困難や試練に直面するからこそ、ちいさな幸せにより大きな幸せとして味わえる機会もあるような気がするからである。例えば、風雪のなかで見た、この朝陽のように。


「津軽の海」(2008年1月制作/風景/絵画と文:井上晴雄。/F10号)


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