TOP用 岬の分教場
「岬の分教場」は、海のすぐ傍に現存していた。昔ながらの木造の校舎。建物の中に入ると、暗がりのなかに、黒光りする廊下がしんと静まりかえり続いていた。
ガラガラと、重たい扉を開けて教室に入ると、窓から差し込むやわらかな光のなかに、古びた椅子と机が並ぶ光景が目に飛び込んできた。
先日、JR瀬戸大橋線児島駅からバスに揺られ、夕陽の名所として知られる岡山県の鷲羽山に足を運んだ。夕刻まで空は雲で覆われていたものの、第二展望台に上ると、雲の切れ間から西陽が差し込み、海は茜色に染まりはじめた。沖に目を遣ると、雄大な瀬戸大橋と塩飽諸島のシルエットがくっきりと浮かびあがっている。そのダイナミックな光景に圧倒され筆を執った。輝く潮の流れには、ゆっくりと漁船が行き交い、まるでときが止まってしまったかのようだ。
→地図(岡山県 鷲羽山)
「農村の風景」
絵と文 井上晴雄
兵庫県と鳥取県との県境に近い、ちいさな農村に訪れた。雪に閉ざされていた野山は、いつしか春の光景に様変わりしていた。畦道には、菜の花やレンゲソウが可憐に咲き乱れ、小川からは、軽やかな瀬音が聞こえてくる。
小径を歩いていくと、明るい段々畑が広がった。そこには、おばあさんたちが、農作業に勤しむ姿があった。まるで春の到来を全身で喜ぶようかのように、懸命に田畑を耕し種を蒔いている姿が印象に残った。ここから農作物が育っていくのだ。
季節は、毎年、正確に巡ってくる。春になると若葉が芽吹き、夏になると、入道雲が湧きあがる。一見すると、ごく当たり前のことかもしれない。ただ、ふと立ち止まってみると、その平凡なことが至極、奇跡的でありがたいことに思えてならない。
(「春先の農村風景」/播磨/自然/農村の風景/絵画と文:井上晴雄./国内旅行/風景/風景絵画)
「大山展望台にて」(湯郷温泉の風景/岡山県)
絵画と文 井上晴雄
美作で湯郷温泉を一望できるスポットといえば、大山(おおやま)展望台が知られている。温泉街から車で曲がりくねった山道を山頂にのぼりつめること約15分。標高約343mの展望台に辿りつくと、視界が一気に開ける。大きく清澄な空の下には、那岐連山や後山などの山々が淡く稜線を連ね、手前には、清流吉野川に沿って湯郷温泉の街並みが、細長く横たわる。まるで、ときを忘れてしまいそうな絶景である。
大山は、季節によって、さまざまな姿を見せてくれる山でもある。6月中旬~7月中旬には(年によって変動あり)途中の山道はアジサイの名所となる。約2・5kmにわたり、3千本ものアジサイが紫に白に咲き競うさまは圧巻である。晩秋から冬にかけては、山頂から雲海を望める日もあり、こちらもまた幻想的な景観だ。
湯郷温泉をとり囲む美作の自然は、どこまでも懐が深く、巡る四季の変遷に応じて、旅人に、訪れるたびの感動を与えてくれる。
,/p>
(※当絵画は、湯郷温泉の「湯郷温泉観光案内所」に飾られています)
「函館の夜景」 (北海道 函館市)
絵画(風景画)と文 井上晴雄
ロープウェイが高度を上げるととともに、木々の隙間からこぼれる市街地の灯りが、キラキラとまたたきはじめた。 函館 ならではの、扇状の地形があらわれたかと思うと、それは、ダイヤモンドを散りばめたような光の渦となって、ドラマチックに広がっていった。あまりの美しさに、思わず息を呑んだ。
函館 は、北海道 の南西部に位置する、落ち着いた雰囲気の港町。かつて、本州や海外からの船が、頻繁に入港して栄えたといわれている。幕末の函館港開港時には、各国の商船が来航したほか、明治41年(1908年)からは、青森より青函連絡船が入港して北海道の玄関口としての機能も果たした。当時、函館の空に、重厚な汽笛がこだまさない日はなかったという。 それから80年経った昭和63年(1988年)のこと。青函トンネルの開業に伴って、青函連絡船は、その役目を終えて、津軽海峡から姿を消した。以降、函館は次第に、歴史情緒の漂う閑静なまちへと変化していくことになる。
時代が流れるとともに、街並みや人も変わっていく。それは、寂しいことかもしれない。ただ、長い歴史が紡ぎだした「まちの明かり」というものは、いつの時代も、何とあたたかく、美しいことか。そこには、「人々が生きた証」が刻まれているように思う。静かにきらめく函館の市街地を俯瞰しているうちに、私も一生をかけて、まちを美しく彩る、ひとつのやさしい光になりたいと思った。
※ 函館は、香港 、ナポリと並ぶ「世界三大夜景」のひとつ →地図(北海道 函館)
(絵画と文:井上晴雄/2008年1月制作/風景)
「東尋坊の夕陽」
絵と文 井上晴雄
北陸随一の景勝、東尋坊へは、三国観光ホテル(東尋坊温泉)から車で10分ほど。台風が過ぎ去った秋晴れの日、東尋坊に向かうバスを降りると、岬は夕陽色に染まっていた。眼下には、巨大な奇岩群が海中から突き出して連なり、その先には、日本海の大海原が、沈みゆく太陽を映しながらキラキラ輝いている。光る波がゆっ
たりと岸壁に打ち寄せ、何もかもが幸せに包まれるひととき。淡く霞む沖には、東尋坊を巡る遊覧船が船尾を引いて、ゆっくりと横切っていく。
「東尋坊の夕陽」 絵と文 井上晴雄/2011年10月制作/cトラベルニュース社